パンと見世物


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 紀元1~5世紀、古代ローマ帝国の版図は地中海全域に広がり、ローマの都には莫大な富が集積しました。

 時の皇帝たちは、政治的な問題からローマ市民の目を逸らすため、食料を無償で提供し、戦車競走や剣闘士試合などの娯楽を催したといいます。

 この様子をさして、詩人ユウェナリスは「かつて政治と軍事の権威の源泉であった民衆は、今ではパンとサーカス(見世物)ばかりを追い求めている」と書いて批判しました。

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 さて、時代は下って、21世紀の日本です。この国は、75年ほど前にアメリカとの戦争に踏み切り、国が滅びるか否やという体験をしたのですが、それもすっかり昔話となり、今では食料の満ち足りた、娯楽の種にも事欠かない国となりました。

 若者の政治的無関心が指摘されて久しく、中学生、高校生がスマートフォンのゲームに夢中になっている様子を見ると、平和で動乱のない国家の様子は、時代を越えて似てくるのだろうかとも思えます。

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 むろん、子どもの世界が、しばしば私たち大人の世界の縮図であることを考え合わせれば、ぶつぶつと小言ばかり言ってもいられません。

 私たちが、現代の「パンとサーカス」によって、いったい何から目を逸らされているのか、という問題は一考に値することのように思われます。

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 この豊かな生活は、実は誰かの犠牲によって成り立っているのではないのでしょうか。世界中にテロと紛争の火種が燻っている時代、日本だけがガラパゴスよろしく、平和を謳歌できるものなのでしょうか。

 あるいは、ゲームに時間を注ぎ込んでいる自分が、現実世界においては、ゲームの手駒にされているということはないのでしょうか。プレーヤーの側に回るために、私たちはどのように生きていくべきなのでしょうか。

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 まことに、世界の奥行きには果てがなく、人生は驚きと面白味に満ちたものであるように感じます。
あさのは塾便り::本・映画など | 01:32 AM | comments (x) | trackback (x)

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