ピュタゴラス


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 ピタゴラスという人の名前は、誰でも聞いたことがあると思います。

 まず、ピタゴラスの定理(三平方の定理)。これは、中学3年の数学で学習します。

 それから、ピタゴラスイッチ。上から転がしたビー玉が、工夫された複雑なルートをたどって、ついつい目が離せなくなる、あの番組ですね。

 ピタゴラスの名は、商品名などにも使われ、子どもの創意工夫を育てるという意味合いが、持たされているようです。

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 では、彼は実際にはどんな人間だったのか。当の本人、2500年ほど前の古代ギリシア人、ピュタゴラスの話をしてみます。

 彼は、一言で言うなら、まさに天才。すぐれた学者であり、かつカリスマ性を備えた宗教者であって、ピュタゴラス学派(教団)と呼ばれた組織を主宰しました。

 その活動内容が外部に漏れることはなく、一切が秘密に包まれていたのですが、彼らは教義の一環として、数学の研究に力を注いでいました。

 そして、その発想が、私たちの文明の発展に大きく寄与することになります。

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 ピュタゴラスが発見したといわれる、三平方の定理のことを考えてみましょう。

 3センチ、4センチ、5センチの棒を組み合わせれば、直角三角形が作れます。ロープを3対4対5の長さで、上手に折り曲げてもよいです。

 この三角形は手軽に垂直を測れるので、古くから建築などで利用されたようです。この簡単な三角形が直角を持つという事実は、おそらく偶然見つかったのでしょう。

 しかし、この世の全ての直角三角形について「斜辺の2乗は、残りの2辺の2乗の和に等しい」という関係が成立するなら、この発見は桁違いに大きな意味を持っています。

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 ここで、今の私たちの常識から離れ、古代人の立場で想像してみましょう。

 数字とは、知能を獲得した人類が、生活が便利になるように工夫して発明したものです。「直角三角形という図形」と「数字」とは、別々の経緯で使われるようになったはずです。

 ところが、その両者について、常に成り立つ密接な関係が存在したということは、考えてみれば、不思議な話だとは思いませんか。

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 別の例を挙げましょう。ピュタゴラスは音階と数比の関係を発見したと言われています。

 弦を張って、長さを変えながらはじいてみると、「ドの音」と「1オクターブ上のド」の音では、弦の長さの比が2:1になる。

 ドとソでは、長さの比は3:2になる。さらに、ドとファでは4:3になります(周波数はその逆比になります)。

 同時に鳴らすと心地よい(ハモっている)音同士の間に、実は、簡単な数字の比の裏付けがあったわけです。

 こうしてみると、宇宙の調和の端々に、あたかも世界が秩序正しく設計されたかのような、思いもよらぬ数字の関係が重ね合わせになっていることが、予想されるわけです。

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 数の構成原理が、あらゆる存在の構成原理であるとするなら、世界を理解するためには、数の構造そのものを研究すればよい、という発想も生まれてきます。

 ピュタゴラスは、人間の魂を浄め、 輪廻転生という永遠の罰から救済し、本来の神性を回復させて、天上の至福の生に同化させようとしました。

 そして、その魂の浄化の手段こそが、音楽であり、数の研究であったのでした。

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 新興宗教の勢力がトラブルを起こしがちなのは、いつの世でも変わりません。

 彼の教団が力を持つにつれ、その活動には政争と迫害がつきまとい、学者たちが殺害される事件も起きました。

 しかし、彼らの業績は、後代の学者、思想家に大きな影響を与えます。

 今日にあっては、科学があらゆる事象を数量化、数式化によって把握し、私たちの文明を支えています。その源流をたどれば、間違いなくピュタゴラスまで行き着くのです。
あさのは塾便り::本・映画など | 03:05 AM | comments (x) | trackback (x)

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