オイディプス王


あさのは塾ブログ

HOME > ブログ

 ギリシア神話に出てくるオイディプス王のお話です。

 テーバイの国王ライオスは「もし子が生まれれば、その子が父を殺し、母を娶るであろう」という神託を受けます。(当時、神託は神々のお社に行くと、神がかりになった巫女さんが授けてくれます。)

 それで、王はオイディプスが生まれると、そのまま山中に捨てさせました。しかし、赤ん坊は羊飼いに助けられ、巡りめぐって、子どものいないコリントスの王のもとで成長します。

     ◆◇◆◇◆
 さて、成長したオイディプスは自分の出生を疑うようになり、やはり神託を乞いますが、その結果は「お前は父を殺すであろう」というものでした。

 彼はコリントス王を父と思っていましたから、故郷を離れ旅に出ますが、馬車で行き違うときに相手の老人とトラブルになり、老人を殺してしまいます。

 彼は気づきませんが、その殺した相手こそ、テーバイ王ライオスでした。

     ◆◇◆◇◆

 そうとは知らず、テーバイに入ったオイディプスは、当時人々を苦しめていた怪物スフィンクスを、知恵の力で倒します。

 そして、その功績により、空位だった王に推され、未亡人となっていた王妃イオカステを娶ります。

     ◆◇◆◇◆

 その後、国に不作と疫病が続き「ライオス殺害の犯人が災いの源である」という神託が降ります。

 オイディプスは、事の真相を調べさせ、人々を問い詰めるうちに、自分が殺した男こそが王ライオスであり、さらには、自分の実父であったことを悟るのですね。

 妃になっていた実母イオカステは縊死し、オイディプスは自分の目を潰して、放浪の旅に出るのでした。

     ◆◇◆◇◆

 初めてこの話を読んだときの、何とも言えない、暗い胸のざわつきは忘れられません。神話が語る内容のそら恐ろしさ、ネジが飛んでいるような想像力とでもいいますか。

 この話には引っかかるところもあります。そもそも、いずれかの神託がなければ、逆に、この出来事は起きなかったかもしれない。

 神託の実現を避けようとする努力が、むしろ、神託の実現を後押ししてしまったこと。神さまの言葉ながら、何だか底意地の悪さが感じられます。

     ◆◇◆◇◆

 そして、オイディプスが運命を変えるため、積極的に行動しなければ、やはり、この出来事は起こらなかったかもしれないこと。

 正義感を持って解決しようという努力が、彼にとって最悪の結末を引き起こしたこと。人間は、自ら矛盾を避けられない存在だということなのでしょうか。
あさのは塾便り::本・映画など | 09:27 PM | comments (x) | trackback (x)

pagetop