がんばれヒラリオン


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 クラシック・バレエ『ジゼル』のお話です。貴族の若者アルブレヒトは自分の身分を隠して、村娘ジゼルと恋仲になっています。

 実は、彼にはバチルドというれっきとした婚約者までいるのですが、目下のところはジゼルに会うのが楽しくて仕方がない。

 しかし、あるとき貴族たちが狩りの途中で村に立ち寄り、そこにバチルドも同行していて、三人は期せずして顔を合わせてしまいます。

 取っ組み合いでも始まれば楽しい話で済んだのですが、あいにくジゼルは繊細で傷つきやすく、おまけに心臓が悪かった。

 恋人の隠し事を知った彼女は、ショックに耐えきれず、気が触れて死んでしまいます。

 なんだか唐突な感じですが、「狂乱の場」は19世紀オペラ界の流行りの演出だそうで、このバレエでも見せ場の一つとされています。

 第一幕はここで終わり。アルブレヒトにしてみれば、軽い気持ちで始めた恋愛が、重たい終わりを告げることとなりました。

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 さて、ここにもう一人の若者がいます。名前はヒラリオン。彼はジゼルと幼馴染みで、やはり彼女のことが好き。しかし、ジゼルの方には全然その気がない。

 ヒラリオンは、ジゼルがよそ者と付き合っているのを見て、その正体を疑い始めます。

 ジゼルとバチルドが顔を合わせたとき、訳がわからないでいるジゼルに証拠を突きつけて、アルブレヒトの秘密を暴露したのは彼なのです。

 話は飛びますが、第二幕でヒラリオンは死んでしまいます。一方、アルブレヒトは、精霊となったジゼルによって助けられ、二人は対照的な結末を迎える。

 はたして、ヒラリオンのしたことはそんなに悪いことだったのでしょうか。

     ◆◇◆◇◆

 普通にこのバレエを見ていれば、主人公のアルブレヒトに感情移入しがちですが、現実に立ち戻ってみると、いやいや自分はヒラリオンの役が回ってくる人間だったなと思い出します。

 ヒラリオンはどんな人物だったのか。ジゼルの気持ちに構わず付きまとうところは、ジゼルからすれば迷惑である。

 ただ、男性が好きな女性にアプローチするのは自然なことで、それがないと恋愛は始まらない。その適切な押し具合というのは、なかなか難しいものでしょう。

 アルブレヒトの正体を暴くのですから、それなりに知恵も回る。相手を陥れようとするところは、いくぶん小賢しい。しかし、この件では、もともとアルブレヒトの方が悪いのです。

 大勢の前で騒ぎを起こした点は、思慮深かったとは言えない。他方、それがジゼルを心配する気持ちから出たのも嘘ではない。ジゼルを死に至らしめたときの、彼の嘆きは本物でしょう。

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 恋愛の難しさは、いつの時代になっても変わらないみたいです。でも、ここではあえて、引き際を心得たヒラリオンになろうと言いたい。

 女性の気持ちを考えずにつきまとうのは論外だから、引くべきときは引かないといけない。しかし、まずチャレンジしてみないことには、何も始まらない話です。

 押すべきなのか、引くべきなのか。どちらのボタンを選べばよいか簡単にはわからない。賭けるたびに、結果に一喜一憂することになるでしょう。

 一度や二度、手痛い目にあうかも知れません。しかし、それこそ人生がドラマである証拠というものです。

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 そうそう、忘れていました。アルブレヒトの役が回ってくる人には、そちらなりの別の心配事があるでしょう。

 それもまた大変そうです。ただし、君に役立つアドバイスはここにはない。まことに遺憾なことであります。
あさのは塾便り::本・映画など | 12:55 AM | comments (x) | trackback (x)

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