生きようとする意志


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 小学生に変わらず人気があるのが恐竜ですね。福井の恐竜博物館に行ったと話してくれた生徒もいます。これを機会に生物の歴史を振り返ってみましょう。

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 46億年前に地球ができました。35億年前には最古の微生物(バクテリア)が存在し化石として残されています。

 当時生物は有機物を分解して細々とエネルギーを得ていました。やがてシアノバクテリアが光合成を開始。地球に酸素が増えはじめました。

 次に、酸素を呼吸できる好気性細菌が生まれます。酸素は物質を酸化させるので猛毒ですが、使いこなせればエネルギー効率が飛躍的に上がります。

 また、酸素からDNAを保護するため、核を持つ真核生物が生まれました。

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 やがて、生物が好気性細菌を取り込んで共生を始め、多くの生物が酸素を利用できるようになります。

 また、一部はシアノバクテリアも取り込み、みずから光合成を始めて植物となります。そして、生物は単細胞から多細胞へ進化します。

 ここにきてようやく生物が繁栄する素地ができました。5億4100万年前、多種多様な生物が大量に出現(カンブリア大爆発)、古生代の始まりです。

 生物登場から実に30億年以上の月日が経っていました。

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 しかし、ここまで周到に準備したにもかかわらず、進化の道筋はその後も穏やかではありません。なぜなら、地球の環境変化などが、原因で生物は5回の大量絶滅を経験することになるからです。

 そのたびに地球上の半数前後の種が滅び、繁栄していた生き物は主役を交代させられました。恐竜が栄えたのは中生代ですが、彼らはその5回目の大量絶滅に遭遇する運命でした。

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 今から6550万年前、巨大な隕石がメキシコのユカタン半島に落下しました。

 2010年の研究によれば、衝突天体の大きさは直径10~15㎞、衝突速度は秒速20㎞、衝突時のエネルギーは広島型原爆の10億倍。

 これによって マグニチュード(M)11 以上に相当する地震が起こり、高さ300mの巨大津波が発生します。(ちなみに、2011年の東日本大震災は M9。エネルギーに換算すると M11 はその1000倍になります。また、津波の最大の高さは福島県相馬市での 9.3m 以上でした)

 衝突地点に直径180㎞のクレーターが形成され、大量の海水や岩石が瞬時に蒸発。大気と海は酸性に汚染され、硫酸の雨が降りました。

 森林火災が起こり塵や煤が舞い上がって全地球を真っ暗に覆い、10年に渡って太陽光を遮断。海のプランクトン、アンモナイト、恐竜などが死滅しました。

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 想像を絶する大災害ですが、それでも生命は生き残る。その苦難を思えば、人間の先祖たちに畏敬の念すら抱いてしまいます。

 興味深いのは、大量絶滅後は古い型の生物が復活するわけではなく、代わりに新しい型の生物が生まれ、さらに多様化していくということです。

 絶滅した生物の中には、エディアカラ生物群、バージェス動物群などといった、私たちの知る生物とは系統の異なる奇妙な生き物も多く発見されています。

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 進化の道筋というのは一本道ではないようです。生物進化のエネルギーは貪欲で、一つの道が行き止まればまた違う道を見つける。

 生物は次々に創造されて生き残りを図る。上手く行かなければ、その屍を乗り越えてさらに次の生物が工夫される。過酷で無慈悲な世界です。

 私たち人間の今の姿も絶えざる試行錯誤の結果なのでしょう。今後再び大量絶滅が起こり、次の生き物が取って代わる可能性だってないとはいえません。

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 35億年の間、生存への挑戦は繰り返されてきました。地球はあたかも壮大な実験室の観を呈しています。

 生物の飽くなき進化の欲求は、ショーペンハウアーの「生きんとする盲目的意志」という言葉を思い出させます。

 「人はパンのみにて生くるものに非ず」なんてややこしいことを言い出す生物が出現することを、神様は予想していたのでしょうか。
あさのは塾便り::本・映画など | 04:59 PM | comments (x) | trackback (x)

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